「選挙活動って、結局は何をすればいいの?」 「人が多い駅前で一生懸命チラシを配っているけれど、本当にこれで票が増えているのだろうか?」
政治の世界に飛び込んだ候補者や、それを支える議員、スタッフの多くが、実はこうした根本的な問いに答えを持たぬまま、慣習的な「運動」に時間を費やしています。
今回、選挙の最前線で活動をサポートする中で見えてきた、選挙活動の「実情」と、勝つための「真の構造」について、マーケティングエンジニアの視点から整理しました。
1. 選挙の現場で起きている「OS不在」の悲劇
多くの陣営を見ていて驚くのは、驚くほど「基礎知識」が共有されていないという実態です。
- ターゲット不在のバラマキ: 投票権を持たない人も多い大都市のターミナル駅で、闇雲にチラシを配る「非効率な熱量」。
- ストーリーの欠如: 政策の羅列ばかりで、なぜその候補者であるべきかという「共感のストーリー」が語られない。
- 属人的な組織運営: 5人のコアメンバー(会計・運行・集会・広報・事務)の役割分担すら曖昧なまま、候補者が一人で空回りしている。
これは、最新のアプリ(SNS発信など)を導入しようとしながら、土台となるOS(選挙の基本原則*がインストールされていない状態です。
2. 選挙活動を3つのレイヤーで捉え直す
選挙活動を効率化し、勝利に導くためには、活動を「点」ではなく「層」で捉える必要があります。
- フロント(有権者接点): 街頭演説、SNS、ネットドブ板。単なる認知ではなく「応援される力」を可視化する場所。
- ミドル(戦略・組織): 5人のコアチーム、名簿のデータ管理、ストーリー構築。ここが「票を固める」エンジン。
- バック(事務・インフラ): 公選法遵守、居住要件の確認、家族・職場の調整。負けないための鉄壁の守り。
3. 「効率」の罠:「人が多い場所」より「票が出る地域」
よくある誤解が、「人が多い=効率が良い」という考え方です。 マーケティングで言えば、CVR(成約率)の極めて低い大衆媒体に予算を投じているようなものです。
選挙における本当の効率とは、「自分に縁のある地域」や「過去に支持があった地域」を徹底的に歩き、名簿を1行ずつ埋めていく「着票率」の追求にあります。空中戦(SNS)で風を吹かせ、地上戦(ドブ板)でその風を1票という形にキャプチャする。この同期こそがエンジニアリングの出番です。
4. 陣営の「現在地」を知る:実力診断シートの活用
感情や気合だけで進むのではなく、客観的な「診断」が必要です。
- 5人の役割は決まっているか?
- 自分の挫折体験をストーリーとして語れているか?
- ボランティアに「ありがとう」を伝えているか?
こうした「当たり前だが、パニックになると抜ける項目」をスコアリングし、常に軌道修正できる陣営だけが、厳しい選挙戦を勝ち抜くことができます。
結びに:選挙を「科学」し、志ある人を支える
日本の選挙は、いまだに前時代的なアナログ作業の積み重ねです。しかし、そこに「マーケティングの戦略」と「エンジニアリングの効率化」を持ち込めば、候補者はもっと本質的な「有権者との対話」に時間を使えるようになります。
選挙活動 陣営実力診断シート(Action-Based Scorecard)
【管理・戦略レイヤー】
| 項目 | 具体的なチェック内容 | 評価(0-5) | 備考 |
| ストーリーの明確化 | 1分で「なぜ私なのか」「何を成したいか」を、自身の挫折経験などを交えて語れるか? | 政策の羅列ではなく共感。 | |
| 5人のコアメンバー | 会計・運行・集会・広報・事務の5つの責任者が明確に決まっているか? | 候補者一人で抱えていないか。 | |
| ターゲット地域の選定 | 単なる「人混み」ではなく、過去の得票傾向や地縁に基づいた重点エリアを特定しているか? | 空中戦より着票率の重視。 | |
| 生活基盤の調整 | 家族の合意、在職立候補の調整、3ヶ月以上の居住実態の証跡(公共料金等)はあるか? | 当選無効・不戦敗の防止。 |
【地上戦(フィールド)レイヤー】
項目 | 具体的なチェック内容 | 評価(0-5) | 備考 |
| 名簿のデータ管理 | 支持者名簿を電子化し、挨拶・電話・紹介の状況をリアルタイムで可視化しているか? | 誰が「確実」かの可視化。 | |
| 電話作戦の完遂 | 名簿に対して、直接話して「支持の約束」を取り付けるアウトバウンドを行っているか? | 挨拶だけで終わらせない。 | |
| ミニ集会の開催数 | 少人数の対面機会を頻繁に作り、コアなファン(=広報部長)を育成できているか? | 密度の濃い信頼構築。 | |
| ポスティングの戦略 | 業者任せにせず、自分たちの足で配り、地域の反応(ゴミ出しや挨拶)を拾えているか? | 地域の解像度を上げる。 |
*電話は地域、属性に応じて利用する・しないを決めたほうがいいですね
【空中戦・後方支援レイヤー】
| 項目 | 具体的なチェック内容 | 評価(0-5) | 備考 |
| ネットドブ板の運用 | SNS(LINE, FB等)を、情報の拡散だけでなく、個別の双方向コミュニケーションに使っているか? | 投稿しっぱなしにしない。 | |
| 部材の訴求力 | チラシやポスターが「誰が、何をする人か」を瞬時に伝えるデザインになっているか? | 情報過多になっていないか。 | |
| ボランティア教育 | 新規ボランティアが即戦力になれるマニュアルがあり、候補者が感謝を直接伝えているか? | 離脱防止と士気維持。 | |
| 他陣営での実地学習 | 候補者や幹部が一度でも「他人の選挙の手伝い」をし、客観的な視点を得ているか? | 独りよがりの防止。 |
スコアの見方と改善のアドバイス
- 平均4点以上: 当選圏内の組織力です。現状を維持しつつ、突発的なスキャンダル対策に注力してください。
- 平均2〜3点: 「活動はしているが票になっていない」可能性が高いです。特に「ターゲット選定」と「名簿管理」を見直してください。
- 平均2点以下: 準備不足です。このままではボランティアが疲弊して終わります。早急に「5人のコアメンバー」を固める必要があります。





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