選挙の現場で、非常に真面目で、政策も丁寧で、人間性も素晴らしい。それなのに、マイクを持つと途端に空気がどんよりと重くなり、有権者が足を止めてくれない……。そんな「もったいない」候補者を、私は何度も見てきました。
特に催し物やイベント会場の近くで、日常を楽しんでいる人たちに向けて「暗い社会課題」ばかりを突きつけるのは、マーケティングの観点から見れば「ミスマッチ」でしかありません。
今回は、真面目すぎるがゆえに損をしている候補者が、どうすれば有権者の心に届く「ポジティブな演説」に変えられるのか。その具体策をまとめます。
1. 課題(Pain)を語る時間を「2割」に絞る
真面目な候補者は、現状の分析に熱が入りすぎる傾向があります。しかし、街頭で求められているのは「絶望の共有」ではなく「希望の提示」です。
- 改善のルール: 現状の課題(暗い話)は2割、解決した後の未来(明るい話)を8割にする。
- ポイント: 「このままではダメだ」で終わるのではなく、「こうなればもっと良くなる」という「ベネフィット(利益)」に言葉の比重を移します。
2. 「スペック」ではなく「ストーリー」で感情を動かす
政策の中身(スペック)を淡々と説明しても、人の感情は動きません。有権者が知りたいのは「なぜ、あなたがそれをやるのか」という情緒的価値です。
- 丁寧な言葉遣いの裏に隠れた、候補者自身の「悔しさ」や「原体験」をあえてさらけ出す。
- 「正しい言葉」よりも「体温のある言葉」を選ぶ。
3. TPOに合わせた「場の空気」のミラーリング
お祭りやイベントの近くは、有権者が「楽しい」と感じている空間です。そこに「暗く重い話」を持ち込むのは、パーティーで説教を始めるようなもの。
- 第一声を変える: 「今日はいいお天気ですね!」「楽しそうな笑い声が聞こえてきます」と、まずは現場の空気を肯定する。
- 接続する: 「この楽しい日常を、次の世代にも繋いでいきたい。だから私は……」と、ポジティブな文脈から政策へ繋げます。
4. 聴衆を「説教」の対象から「パートナー」に変える
真面目な候補者は、無意識のうちに「教える人(政治家)」と「教わる人(有権者)」という壁を作ってしまいがちです。
- 「~しなければならない」という義務の言葉を、「一緒に~していきましょう」という提案の言葉に変える。
- 有権者を「課題を解決してあげる対象」ではなく、「一緒に街を作るパートナー」として位置づけます。
5. デリバリーの「非言語情報」をアップデートする
メラビアンの法則を引くまでもなく、情報の9割以上は視覚と聴覚で決まります。
- 目線: 原稿を捨て、1人1人の目を見る「アイコンタクト」を。
- トーン: 語尾を1トーン上げ、遠くの人に「おーい!」と呼びかけるような明るい発声を。
- 「間」: 伝えたい一言の前に、あえて3秒黙る。これだけで「つまらない話」が「重要なメッセージ」に変わります。
結び:伝え方は「優しさ」である
政治家にとって、政策が正しいのは当たり前です。しかし、その正しい政策も、相手に届かなければ存在しないのと同じです。
「真面目だけどつまらない」と言われてしまう候補者に必要なのは、面白いジョークではありません。「自分の言葉が相手にどう届いているか」を想像するマーケティングの視点です。
あなたの熱意が、正しい形で有権者に届くように。伝え方一つで、選挙の風向きは必ず変わります。





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