街頭演説やニュースで政治家が口にする「みなさん」という呼びかけ。
一見、親しみを込めた挨拶のように聞こえますが、どこか他人事のように、あるいは高い場所から見下ろされているような、奇妙な「距離感」を覚えたことはありませんか?
実は、この違和感にはしっかりとした理由があります。今日は、政治の世界では当たり前でも、ビジネスの場では「NG」とされる言葉の裏側を深掘りしてみます。
1. 「みなさん」は、境界線を引く言葉
ビジネスにおいて、相手は「大切な顧客」であり「共に歩むパートナー」です。主語は自然と「私たちは」になり、相手の個別の事情に寄り添うことが求められます。
しかし、政治家が使う「みなさん」は、聞き手を一つの大きな塊として扱います。
- 演壇に立つ者(導く側)
- それ以外の大勢(導かれる側)
この二者間の構造を固定してしまうため、言われれば言われるほど、「自分事」として響かなくなってしまうのです。
2. ビジネス視点で見れば「アウト」な政治語録
「みなさん」以外にも、ビジネスパーソンの感覚を逆撫でする表現は少なくありません。
- 「検討を加速させる」ビジネスなら「いつまでに何を決定するのか?」と突っ込まれる場面です。具体策がない状態を前向きな言葉で包み隠すテクニックですが、スピード感を重視する現場では「何もしていない」と同義に取られます。
- 「誤解を招いたのなら遺憾である」これは究極の責任転嫁です。ビジネスでミスをした際に「あなたの受け取り方が悪かったのなら残念です」と言えば、一瞬で信頼を失うでしょう。
- 「しかるべきタイミングで」納期のない仕事は、ビジネスでは仕事と呼びません。不透明な時間軸は、不誠実さの表れと見なされます。
3. なぜ、これほどまでに「ズレ」が生じるのか?
政治とビジネスでは、言葉に求められる役割が根本的に異なります。
| 項目 | 政治の言葉 | ビジネスの言葉 |
| 目的 | 批判を避け、妥協点を探る | 課題を解決し、利益を出す |
| 責任 | 曖昧に分散させる | 明確に特定する |
| 優先順位 | 敵を作らないこと | 成果を出すこと |
政治家にとっての言葉は「防具」であり、ビジネスパーソンにとっての言葉は「道具」です。守るための言葉と、動かすための言葉。この目的の違いが、あの独特の違和感を生んでいる正体と言えるでしょう。
結びに
私たちが政治家の言葉にモヤモヤするのは、私たちが日々、責任と具体性が求められる「誠実な言葉の戦場」で生きているからかもしれません。
「みなさん」とひとまとめにされることに違和感を持てる感性は、一人ひとりの顔を見て仕事をしようとする、ビジネスパーソンとしての誇りの裏返しでもあるはずです。
(あとがき・SNSシェア用の一言)
当たり前だと思っていた表現も、視点を変えるとその本質が見えてきます。皆さんは、最近耳にした言葉で「それってどうなの?」と思ったものはありますか?





コメント