「あの現職は不祥事を起こした。今度こそ落ちるだろう」 ……そんな期待を裏切るように、不祥事を起こした政治家が再選を果たす光景を、私たちは何度も見てきました。
なぜ、真っ当な新人が勝てないのか? それは、新人が「知名度の壁」と「組織票の岩盤」に正攻法でぶつかっているからです。
しかし、SNSが選挙のインフラとなった今、戦い方は劇的に変わりました。無名の新人が、不祥事現職を逆転でなぎ倒すための「デジタル時代の必勝マーケティング」を考察します。
1. 「批判」ではなく「ナラティブ(物語)」を売れ
有権者は、現職の不祥事に怒っています。
しかし、新人がその不祥事を執拗に責めるだけでは、「不平不満ばかりの暗い候補者」という印象を持たれ、票は伸びません。
勝つ新人がやっているのは、「自分を主人公にした物語」の構築です。
- 「たった一人の反乱」を演出: 巨大な組織票を持つ現職に対し、スマホ一台で立ち向かう「弱者(アンダードッグ)」の姿をSNSでさらけ出します。
- 不祥事を「古い政治」の象徴にする: 個人の不祥事を叩くのではなく、「こういうことが起きる古い体質そのものを、僕たちの世代で終わりにしませんか?」と、大きな大義名分にすり替えます。
2. 「空中戦」から「当事者意識」を育てる
今の選挙において、SNSはただの告知ツールではありません。有権者を「観客」から「陣営の一員」に変える装置です。
- 「舞台裏」の全公開: ビラ配りで門前払いされた瞬間、資金が足りなくて頭を抱える夜。そんな「負の側面」をショート動画で見せることで、フォロワーに「自分が支えないとこの候補者は消えてしまう」という強い当事者意識(推し活心理)を植え付けます。
- 双方向の意思決定: 「街頭演説の場所をアンケートで決める」「政策のキャッチコピーを募集する」といった小さな参加を積み重ねることで、SNS上のフォロワーを「動く地上軍(口コミ部隊)」へと進化させます。
3. アルゴリズムを味方につける「24時間接触」
「選挙期間だけ現れる人」に、有権者は心を動かされません。
- ショート動画による爆撃: 10分の演説動画よりも、20秒の切り抜き動画を20本。TikTokやInstagramリールで「何度も目にする」状態を作ります。脳科学的に、人は接触回数が多いものに信頼を寄せます(単純接触効果)。
- 「政治家」ではなく「隣の兄ちゃん・姉ちゃん」: スーツを脱ぎ、地元のラーメンを食べ、フォロワーのコメントに即レスする。この「圧倒的な身近さ」こそが、雲の上の存在である(そして不祥事でイメージの悪い)現職に対する最大の差別化になります。
4. 組織票を無効化する「空気の支配」
現職の強みは「投票に行くことが決まっている固定票」です。これを突破するには、「普段選挙に行かない層」を動かす空気を作るしかありません。
「どうせ変わらない」という冷めた空気が、「もしかしたら、この人なら変えてくれるかも」という熱狂に変わった瞬間、組織票という名の岩盤は一気に崩れます。兵庫県知事選や各地の地方選で見られた「SNSによる大逆転」の正体は、この「空気の変容」です。
結論:新人に必要なのは「覚悟とスマホ」
不祥事現職は、守るものが多いために「守りの戦い」しかできません。 一方で、無名の新人には失うものが何もありません。
SNSという武器を手に、徹底的に自分をオープンにし、有権者と「共に戦う物語」を作ることができたなら。たとえ今は無名でも、投開票日の夜、テレビ画面には「当選確実」の文字があなたの名前の上に躍るはずです。




