マーケティングに携わる方、あるいはこれから学ぼうとしている方にとって、「結局、マーケティングって何?」という問いはシンプルながら非常に奥が深いものです。
2024年に日本マーケティング協会(JMA)が34年ぶりに定義を刷新したこともあり、今、マーケティングの捉え方は大きな転換期を迎えています。
今回は、主要団体から著名な学者、そしてGAFAMのような巨大IT企業の視点まで、「2025年最新版:マーケティングの定義」を網羅的にまとめました。
1. 主要団体による「公式」の定義
まずは、業界のスタンダードとなる定義を見てみましょう。
日本マーケティング協会(JMA)
2024年に刷新された最新の定義です。
「顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。」
【ここがポイント】
かつての「売るための手法」という枠を超え、「サステナビリティ(持続可能性)」や「社会との共創」が強調されています。
アメリカマーケティング協会(AMA)
世界で最も参照される定義です。
「顧客、クライアント、パートナー、および社会一般に対して価値を持つ提供物を、創造し、コミュニケーションし、配送し、および交換する活動、組織およびプロセスである。」
2. 時代を作った学者・実務家の定義
次に、マーケティングの本質を突いた著名人たちの言葉を紹介します。
| 人物名 | 定義・考え方 |
| P. ドラッカー | 「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。」 |
| F. コトラー | 「ニーズを満たす製品を創造・提供し、利益を得ること。」 |
| 森岡 毅 | 「顧客の欲求を理解し、それに応じた価値を提供するプロセス」 |
ドラッカーの言葉通り、顧客を深く理解し、放っておいても「売れる仕組み」を作ることこそが、マーケティングの究極のゴールと言えます。
3. GAFAMが実践する「独自の哲学」
現代のビジネスを牽引する巨大IT企業は、マーケティングを単なる宣伝ではなく、「経営哲学そのもの」として定義しています。
Apple:感性と印象の転嫁
Appleには1977年から続く「マーケティング哲学」があります。
- Empathy(共感): 誰よりも顧客のニーズを親密に理解する。
- Focus(集中): 重要なこと以外をすべて切り捨てる。
- Impute(印象): パッケージや見た目も製品の質と同じくらい重要視する。
Amazon:顧客への執着(Customer Obsession)
Amazonにとってマーケティングとは「販売促進」ではありません。「顧客の不便を解消する仕組み作り」そのものです。AIによるパーソナライズを通じ、一人ひとりに最適な体験を提供することに執着しています。
Google:ユーザーの意図(Intent)の把握
「ユーザーが知りたい瞬間に、最適な答えを届けること」。検索データからユーザーの「今やりたいこと(意図)」を正確に捉えるプロセスを核としています。
Meta:コミュニティの構築とコネクション
Metaにとってのマーケティングは、「人々がコミュニティを形成し、世界をより身近にする」ためのエンゲージメント構築です。
ユーザー同士のつながりを強めることで、個人の興味・関心に基づいた究極のパーソナライズ広告体験を提供することをビジネスモデルの核としています。
Microsoft:顧客のエンパワーメント
Microsoftは、マーケティングを「世界中のすべての人と組織が、より多くのことを達成できるように支援する」というミッションの具現化としています。
単発の販売ではなく、クラウド(Azure)やAIツールを通じて、顧客が自らの目的を達成するための「継続的なパートナー」になるプロセスを重視しています。
4. 2025年、マーケティングはどう変わったか?
今、実務の現場では、マーケティングの定義に以下の3つのキーワードが不可欠になっています。
- AIとパーソナライゼーション: 個人の好みを予測し、先回りして提案する。
- アジリティ(機敏性): 変化の激しい市場に即座に対応する。
- 責任あるイノベーション: 社会に悪影響を与えない、倫理的な成長。
まとめ:あなたにとっての「マーケティング」とは?
マーケティングの定義は一つではありません。
- 仕組みとして捉えるなら「売れる流れを作ること」
- 価値として捉えるなら「誰かを幸せにすること」
- 社会として捉えるなら「より良い未来を共創すること」
2025年の今、私たちは単にモノを売るだけでなく、「データとテクノロジーを駆使して、いかに顧客や社会に誠実に向き合えるか」を問われていると言えるでしょう。
ついでに、私自身が考えるマーケティング観についても少し触れておきます。
前述のブログにもある通り、マーケティングの定義は時代や業界によって多様であり、上流から下流まで幅広い役割が存在します。そうした中で、現時点の私がマーケティングで最も重視しているのは、「まだ誰も気づいていない価値を見出し、それを提供すること」です。
製品やサービスは、必ず何らかの意図や効能を持って生み出されます。しかし、私は常に「作り手すら気づいていない価値、市場もまだ認識していない価値は何か?」という問いを持ちながら取り組んでいます。もちろん、すべてのクリエイティブに対して新しい価値を見つけられるわけではありません。それでも、この視点を持ち続けることは重要であり、常に物事を新鮮な目で捉える習慣につながります。そして結果として、”仕事がいつも面白い”という状態をつくり出してくれます。(S.Kubota)




