選挙が近づくと、街中にポスターが貼られ、テレビやSNSでは候補者の言葉が飛び交います。
「〇〇の陣」「抜本的改革」「国民に寄り添う」…。力強い言葉の数々に、私たちは何を感じているでしょうか?
政治への関心を高めたいと思いつつも、どこか心に引っかかる「違和感」。今回は、そんな選挙の場で頻繁に耳にする、ちょっとモヤッとする表現の正体について深掘りしてみましょう。
1. 「国を変える」の巨大すぎる主語
私たちが最初に感じがちな違和感、それは「国を変える」というフレーズかもしれません。
「国を変える!」と力強く宣言されるたびに、「たった一人の政治家、たった一票の私に、そんな大きなことが本当にできるのだろうか?」と、どこか冷めた気持ちになってしまう人もいるでしょう。
この言葉の違和感の正体は、「国」という巨大で複雑なシステムを、あたかも魔法のように一瞬で塗り替えられるかのような、非現実的な万能感を漂わせている点にあります。現実の政治は、法律、予算、官僚機構、国際関係など、無数の要素が絡み合った地道な調整の連続です。一人の力で「ガラリと変わる」ことは、構造的に極めて難しいのです。
このフレーズは、有権者に「強力な麻酔薬」をかけるようなものかもしれません。具体的な痛みや複雑な議論を一時的に忘れさせ、大きな夢だけを見せる。しかし、その夢があまりに大きすぎると、かえって現実感がなくなり、私たちの心には響きにくくなってしまうのです。
2. 「上から目線」や「恩着せがましさ」が透ける言葉
「国民の審判を仰ぐ」「一票を投じていただく」「政治に関心を持っていただく」
これらの言葉は一見丁寧ですが、時として、有権者と政治家の間に見えない壁を感じさせることがあります。「審判」という言葉には、まるで裁判官のように国民が裁きを下すかのような、ドラマチックすぎる重みが含まれています。また、「~していただく」という表現は、有権者の自発的な行動を「お願いごと」や「恵み」のように捉えているかのようなニュアンスを与えかねません。
本来、選挙は主権者である国民が、自分たちの代表を選ぶ対等なプロセスです。しかし、これらの言葉からは、どこか「有権者を見下している」あるいは「恩着せがましい」という、上からの視線が透けて見えてしまうことがあります。
3. 中身が空っぽな「抽象的すぎる」表現
「抜本的な改革」「国民に寄り添う」「開かれた政治」
聞こえは非常に良いこれらの言葉も、具体的な内容が伴わないと、ただの「飾り」に過ぎません。「抜本的」と言いながら、どの「根っこ」をどう「抜く」のか語られない。「寄り添う」とは、具体的にどんな行動や政策を指すのかが不明確。これらは、「何かすごいことをやるぞ!」という意気込みだけを伝え、具体的な行動や結果を語っていないため、私たちの心には届きにくいのです。
こうした抽象的な言葉は、ある意味で「便利な逃げ道」として使われることもあります。具体的な政策を語ると必ず賛否両論が生まれるため、あえて曖昧な言葉で多くの支持を集めようとする戦略なのかもしれません。
4. なぜ「戦い」に例えたがるのか?
「〇〇の陣」「決戦の火蓋が切られる」「議席を死守する」「奪還する」
民主主義のプロセスであるはずの選挙を、なぜか「戦い」や「戦争」の比喩で語る光景もよく見られます。政策の議論やビジョンの提示が本質であるはずなのに、まるでどちらかの軍勢が勝つか負けるか、というような殺伐としたイメージを植え付けがちです。
議席は誰かの「領土」ではなく、有権者から一時的に預けられる「責任」であるはずです。しかし、こうした言葉選びからは、まるで「自分の持ち物」を守り、相手から「奪い取る」かのような所有欲が見え隠れし、本来の選挙の目的を見失わせる原因となります。
まとめ:言葉の裏側を読み解く力
今回挙げたような「違和感のある表現」の正体は、突き詰めれば「実生活の手触りのある言葉」と「政治の世界の浮ついた言葉」との間に生じる乖離にあるのかもしれません。
政治家も人間であり、選挙という限られた時間の中で、多くの有権者の心を掴もうと必死です。その中で、時に過剰な表現や抽象的な言葉を選んでしまうのも、ある意味で選挙の「構造的な問題」とも言えるでしょう。
しかし、私たち有権者には、そうした言葉の「マジック」を見破り、その裏に隠された具体的な政策やビジョン、そして候補者自身の本質を読み解く力が求められています。
「国を変える」という言葉に踊らされるのではなく、「私の暮らしのルールをどう変えてくれるのか」「税金の使い道にどう注文をつけてくれるのか」という、もっと身近で具体的な視点から、選挙というプロセスに参加してみてはいかがでしょうか。そうすることで、政治がもっと自分ごとになり、未来を選ぶ一票の重みを実感できるようになるはずです。
このブログ記事で、読者が選挙における言葉の「違和感」について考えるきっかけとなれば幸いです。





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