1. 「考える」と「動く」を分断する
以前の記事「脳科学×マーケティング 脳は「考えない」よう指令を出す。政治家が伴走者を必要とする理由」で触れた通り、人間は忙しくなると「考えなくて済む肉体労働」に逃避します。SNSが後回しになるのは、それが「創造的な思考」を必要とする高負荷な作業だからです。
これを打破するには、SNSを「クリエイティブな仕事」から「単純な工程」へと格下げする必要があります。
- 「ネタの在庫化」: 週に一度、1時間だけ「思考」の時間を確保し、その週の投稿テーマをすべて決めてしまいます。
- 「型(テンプレート)」の固定: 「月曜は政策、水曜は舞台裏」とルーチン化し、当日は「枠を埋めるだけ」の作業に変えます。
- 思考の外部委託: 候補者は「素材(声と映像)」を出すことに専念し、編集や投稿予約はシステムや伴走者に任せる。これにより、候補者の脳を「SNSの運用」というストレスから解放します。
2. デジタル活動を「フィジカル」に変換する
選対本部がデジタルを軽視するのは、それが「手応えのない虚業」に見えるからです。人は「紙のビラが減っていく」ことには達成感を覚えますが、「インプレッションが増える」ことには身体的な実感が伴いません。
そこで、デジタルを「物理化」します。
- 「SNS進捗グラフ」を壁に貼る: フォロワー数や反応数を、あえてアナログなグラフにして選対の壁に貼り出します。
- 撮影を「儀式」にする: 「靴を履く」「たすきをかける」といった一連の出陣動作の中に、「スマホを三脚にセットする」という物理的なアクションを組み込みます。
3. 「鏡」としての伴走者をシステムに組み込む
脳は自分を正当化する天才です。「今日は雨で演説が大変だったからSNSは明日でいい」という言い訳を瞬時に生み出します。
この内なる声を封じ込めるには、「外部の視点」という強制力が必要です。
- メタ認知の代行: 伴走者は単なる作業代行者ではなく、「今、有権者の目にはこう映っていますよ」と冷徹に告げる鏡です。
- 「脳の汗」のペースメーカー: 独りよがりの発信に陥りそうなとき、客観的なデータを持って引き戻す役割。この「他者の視点」が介在することで、脳は初めて「サボり」を中断し、真剣な思考モードに切り替わります。
最後に:身体が動くなら、その「動線」にカメラを置け
「忙しくてSNSまで手が回らない」のは、SNSを既存の活動の「外側」に置いているからです。
マーケティングエンジニアの視点から言えば、これはUX(ユーザーエクスペリエンス)設計のミスです。候補者が最も楽な状態で、かつ無意識のうちに「デジタルな足跡」が残るような動線=システムを構築すること。
脳が「考えたくない」と叫ぶなら、考えずに済む仕組みを作ればいい。それが、SNS時代の選挙を勝ち抜くための「エンジニアリング」です。
(あとがき) 「体を動かして安心したい」という本能に抗うのではなく、そのエネルギーをデジタルへ流し込む。それができれば、あなたの1日の活動は、現場の数百人と同時に、ネット上の数万人に届く資産へと変わります。





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