「インフレになると円安になる」「でもニュースでは“アメリカのインフレでドル高”と言っている」。
この2つは矛盾しているように見えますが、実は “時間軸の違い” を理解すれば、すっきりと腑に落ちます。
為替レートは、各国の通貨の強さを決めるもっとも重要な指標のひとつです。そしてその動きを左右する大きな要因が、インフレ(物価上昇)とデフレ(物価下落)です。本記事では、両者と為替の関係を「購買力」「金利」「貿易」の3つの視点から整理します。
1. 購買力から見たインフレと為替
為替は一言でいえば「お金同士の交換比率」です。しかしその根底には、「そのお金でどれだけのものを買えるのか」という 購買力 が存在します。
インフレ → 通貨安になりやすい
例えば100円だったリンゴが200円になったとしましょう。
これは「リンゴ(物)の価値」に対して「円(お金)の価値」が半分に下がったことを意味します。価値が下がった通貨は、外国通貨に対しても弱くなり、結果として円安方向へ動くのが自然です。
デフレ → 通貨高になりやすい
逆に物価が下がり、100円のリンゴが50円になれば、円の購買力は2倍に。価値が上がった通貨は他国に対しても強くなり、円高に振れやすくなります。
この考え方は「購買力平価説(PPP)」として経済学でも基礎理論として扱われています。
ここまでが 長期的な視点 での為替の動きです。
2. 金利から見たインフレと為替──短期ではこちらが主役
実際の為替市場では、物価そのものよりも 中央銀行の金利政策 が強い影響力を持ちます。
インフレ時 → 金利上昇 → 通貨高
中央銀行はインフレを抑えるため、金利を引き上げます。
金利が高い通貨を持つと利息が多く得られるため、投資家はその通貨を買うようになり、結果として 通貨高 になります。
デフレ時 → 金利下降 → 通貨安
景気を刺激するため、日銀やFRBは金利を下げます。
すると利息の少ない通貨は売られやすくなり、 通貨安 につながります。
では「インフレ=通貨安」と「インフレ=通貨高」は矛盾?
矛盾しているようですが、実は時間軸が違います。
- 長期(購買力の視点):インフレが続くと通貨は安くなる
- 短期〜中期(金利の視点):金利が上がると通貨は高くなる
現在のニュースで「米国のインフレでドル高」という表現が使われるのは、まさに金利による短期的な通貨高の動きが主因です。
3. 貿易から見たインフレと為替
物価は輸出入のバランスにも影響し、ここからも為替が動きます。
インフレ:輸出が減り、円安圧力
国内の物価が上がると、日本製品は海外で相対的に高くなり売れにくくなります。
輸出が減ると、海外で得た外貨を円に替える需要が減り、円安方向の圧力になります。
デフレ:輸出が増え、円高圧力
逆にデフレになると日本製品は相対的に安くなり海外で売れやすくなります。
輸出が増えると、外貨を円に替える動きが増えるため、円高となりやすくなります。
まとめ:なぜ日本では「物価高なのに円安」なのか?
現在の日本では、
- 物価は上昇(インフレ)している
- しかし金利はほぼゼロのまま
- 一方アメリカは高金利を維持
という構図があります。
投資家から見れば
「金利が低い円」より「金利が高いドル」を持った方が魅力的 です。
そのため世界中でドル買い・円売りの動きが起き、円安が進んでいるのです。
つまり、今の円安は 金利差によって説明できる“短期〜中期の動き” であり、購買力平価による長期的な視点とは切り離して考える必要があります。




