「先生、これからは動画の時代です!TikTokで流行りのダンスを踊りましょう!」 「インスタ映えするランチの写真をアップしないと、若者の支持は得られませんよ」
熱意ある若手秘書や、外部のコンサルタントからそう言われるたび、あなたは笑顔で頷きながらも、心のどこかで冷めた疑念を抱いていませんでしょうか。
「言われた通りにやっているが、このスマホ画面上の数字は、本当に選挙の『票』につながっているのか?」
日々増えていくフォロワー数、「いいね」がついた時の心地よい通知音。それは確かに、あなたの承認欲求を満たし、「支持が広がっている」という感覚を与えてくれます。 しかし、投票箱の蓋が開くまで、そのデジタルの数字が現実のパワーを持っているかどうかは、誰にも分かりません。
私が多くの政治関係者と接してきて確信していることがあります。 政治家がSNSについて本当に知りたいことは、「バズる方法」でも「炎上回避術」でもありません。
「デジタルの数字(いいね)を、どうやってリアルの行動(投票)に変換するのか?」 これこそが、最も切実で、最も知られていない「真実」ではないでしょうか。
今回は、多くの政治家が陥る「虚栄の数字」の罠と、そこから抜け出し、デジタルの人気をリアルの権力に変えるための具体的なアプローチについて解説します。
1. フォロワー数という「虚栄の指標(Vanity Metrics)」の罠
まず、残酷な現実を直視する必要があります。
SNSのフォロワー数が数十万人いても落選する候補者がいる一方で、フォロワー数は数千人でも強固な地盤を築きトップ当選する候補者がいます。なぜ、このようなズレが生じるのでしょうか?
それは、あなたのSNSアカウントのフォロワーの中に、「有権者ではない人々」が大量に含まれているからです。
- あなたの選挙区外に住んでいる人々
- 選挙権を持たない未成年者
- 政治的な主張よりも、あなたのキャラクターを「ネタ」として消費しているだけの人々
- (残念ながら存在する)実体のないボットアカウント
これらの人々は、いくら「いいね」を押してくれても、あなたの選挙区の投票所には現れません。
最も危険なのは、タイムラインでチヤホヤされることで「自分は全国的に支持されている」「風が吹いている」と錯覚し、汗をかいて地元を回る「ドブ板選挙(地上戦)」を疎かにしてしまうことです。
SNSは、あなたの声を遠くまで届ける強力な「拡声器」ですが、自動的に票を集めてくれる「集票マシーン」ではありません。まずはこの認識のズレを修正する必要があります。
2. 必要なのは「認知」ではなく「動員」である
ビジネスのマーケティングの世界では、顧客の行動を段階的に捉えます。政治活動も同じです。
- 認知: あなたの名前や顔を知っている状態
- 興味・関心: あなたの政策や主張に共感している状態
- 行動: 投票に行く、寄付をする、ボランティアに登録する状態
多くの政治家のSNS活用は、残念ながら最初の「認知」の段階で止まっています。
「ラーメンを食べました」「きれいな夕日を見ました」という投稿に「いいね」がつくのは、あなたが「知られている」証拠にはなりますが、「支持されている」証拠にはなりません。「いいね」は、スマホ画面を1回タップするだけの、最もコストがかからない受動的な行動だからです。
選挙に必要なのは、有権者に「投票所に足を運ぶ」という、非常にカロリーの高い能動的な行動を起こしてもらうことです。つまり、SNSで目指すべきは、単なる知名度向上ではなく、「動員(Mobilization)」なのです。
3. デジタルをリアルに変える「具体的なアクション(CTA)」
では、「いいね」を「動員」に変えるにはどうすれば良いのでしょうか? 答えはシンプルです。フォロワーに対して、常に具体的な行動を要請する(Call To Action:CTA)ことです。
政治家の投稿によくある「悪い例」と「良い例」を見てみましょう。
【悪い例:報告だけで終わっている】
「今日は〇〇駅前で街頭演説を行いました。足を止めて聞いてくださった皆様、ありがとうございました!明日も頑張ります!」
これを見たフォロワーは、「頑張ってるな、いいね」と思って終わりです。次の行動につながりません。
【良い例:次の行動を促している】
「今日の演説では、地域の〇〇問題について私の解決策を話しました。皆さんはこの問題についてどう思いますか?ぜひコメント欄でご意見を聞かせてください。」
「来週土曜日に、より深い議論をするためのタウンミーティングを開催します。参加をご希望の方は、プロフィールのリンクから申し込みをお願いします!」
違いがお分かりでしょうか? 「良い例」では、コメントを書く、リンクをクリックして申し込む、といった具体的なアクションを求めています。
この小さなアクションに応えてくれた人こそが、あなたの「真の支持者」候補です。 そして、SNSを通じてメールアドレスやLINE公式アカウントへの登録を促し、プラットフォームに依存しない独自の「支援者リスト(デジタル版の後援会名簿)」を構築すること。これこそが、現代における最強の集票活動となります。





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